「もう諦めるか、当たって砕けるか、いっそ奪うしかないでしょ」
妃那の言葉に、なにも言えずにテーブルに伏せたまま。
諦めなきゃいけないことはわかっている。
でも、結婚を知ってから三カ月経ってもまだ気持ちはなくせない。
いっそ当たって砕けてしまえば、気持ちもすっきりして諦めもつくかもしれない。
だけど、今更この気持ちを伝えて引かれたくない。今の距離感を失うこともしたくない。
じゃあ……奪う?
ふたりきりのときに、強引に迫って。『私を選んで』って涙ながらに訴えてみる?
……なんて、嫌な女だ、私。
少しでも考えてしまったことに自己嫌悪を覚え、テーブルにゴツンと頭をぶつけた。
「なにもできないなら、傷が癒えるまで大人しくするしかないよ。それとも、新しい恋でもして忘れる?」
「新しい恋かぁ……それもいいかもねぇ」
「よし、なら今度私がいい男紹介してあげるから!ま、とりあえず今日は飲め飲め!」
口ではそう言うけれど、気持ちはついていかない。
叶わない恋を抱え続けるより、他の誰かと出会って新しい恋をするほうがいいのはわかってる。
でも辰巳なんてすっかり忘れてしまうくらい好きになれる人なんて……いるのかな。
くすぶったままの恋心を飲み込むように、グラスの中の酎ハイを喉に流し込んだ。



