それは大迫のものだったようで、大迫はポケットからスマートフォンを取り出すと画面も見ずに電話を切った。
「悪い。それで、清水……」
再び大迫が話を切り出そうとした。ところが再度電話は音を立てて震える。
「大迫、電話出たほうがいいんじゃない?」
「……悪い」
立て続けに鳴る電話に、なにか大事な用件なのかもしれないと察して大迫に出るように促すと、彼は渋々スマートフォンを見る。
画面には『着信 小野寺』の文字が見え、あの秘書さんからの電話だと気づいた。
大迫は咳払いをひとつすると、通話ボタンをタップして電話に出た。
「……もしもし」
『お疲れさまです、社長。夜分遅くに申し訳ございません』
「本当だな。もう俺は退社してプライベートの時間なんだが」
静かな車内ということもあり、電話から小野寺さんの声が漏れふたりのやりとりが聞こえてしまう。
『申し訳ございません。ですが早急にお伝えしたいことがございまして。今まだ、先程の方……清水さんとはご一緒ですか?』
「清水?一緒だけど」
彼女から出た私の名前に、大迫も不思議そうにこちらをチラリと見た。
『そうですか。では社長、はっきりと申し上げます。その方とは距離を置いてください』
ところがその言葉に、彼の顔は怪訝なものへと変わる。
「は……?なに言ってんだよ。お前には関係ないだろ」
『私にはなくとも、会社とあなたの名誉には関わってくるんです』
会社と、大迫の名誉に。
その言葉に、嫌な予感がした。
『その方、不倫が原因で前の会社を辞めてますよ』
それは見事に的中して、全身の血の気がサッと引くのを感じた。
なんで……小野寺さんが、そのことを。
絶句していると、電話の向こうの彼女は言葉を続ける。



