愛がなくても、生きていける




「……清水?どうかしたか?」

「う、ううん……なんでもない」



ついさっきまでのふわふわと、キラキラとした気持ちが、現実にかえることで一気にしぼんでいく。



……ダメ、だ。

大迫のことを愛しいと思う、恋愛感情に浮かれるなんていけない。

私には、幸せになる資格なんてないのだから。

だから、大迫のキスに特別な感情が込められているのなら……私は、受け入れてはいけない。



彼に続くように私は馬からゆっくりと降りる。

すると目の前には、その大きな手がそっと差し出された。



「え……?」



その手の意味を問うように顔を上げると、大迫は優しい眼差しで私を見つめている。



「手、つなぎたい」



私の心の内のものに、どこか勘づいたのだろうか。優しく言う彼に胸がぎゅっと締め付けられた。

受け入れてはいけない。ここで跳ね除けて、ただの友達でいるべきだ。

そう自分に言い聞かせても心は言うことをきかず、差し出された手にそっと手を重ねた。



大迫は長い指でそっと包むように、私の手を握る。

愛しい。あたたかい。

ダメだと思っても、それでもやっぱりそばにいたい。





メリーゴーランドを離れたあとも、大迫は私の手を握ったまま園内を歩いた。

そして遊園地を出て、車で帰路につく。その間もふたりの間にはまともな会話はない。

けれどそれは悪い意味の無言ではなく、どことなくお互い緊張や照れで言葉を選んでいるように感じた。



「……あ、ここで大丈夫。家、すぐ近くだから」



自宅近くの通りで言うと大迫は車を止める。

そして少し黙ったあと、ひとつ息を吸い込んで声を発した。



「……あのさ、清水」



真剣なその声に、その言葉の続きを想像してドキリとした。

ところがその瞬間

ーーピリリリリ

緊張感を打ち破るかのように、スマートフォンが鳴った。