愛がなくても、生きていける




「これでひと通り撮影終了……大迫、荷物持ってくれてありがとう」

「いや、いいけど……お前、仕事中まるで別人みたいだな」

「そうかな」

「あぁ。真剣な顔で周りの音も聞こえてないくらい一心に撮り続けて、かっこいいよ」



率直に褒めてくれるその言葉が嬉しくて、胸の奥がくすぐったい。

ここで『ありがとう、うれしい』と素直に言えたらかわいいのだろうけど……気恥ずかしさから言えず、私は話題をそらした。



「そういえば、高校の頃何人かで遊園地に遊びに行ったの覚えてる?」

「あぁ。あの時たしか、じゃんけんで負けたふたりでメリーゴーランド乗ろうってなって、俺たちふたりが負けたんだよな」



思い出すのは、周りに冷やかされながらふたりでひとつの馬に乗ったときのこと。

その時にはすでに大迫に恋心を抱いていた私は、緊張でまともに顔も見られなくて……ただただ無言のまま、回る景色だけを見ていた。

その時のことを思い出して、少し恥ずかしくなる私に大迫も懐かしむように笑う。



「今思うと、あの頃はガキだったな」

「そう?大迫は大人っぽいほうだったと思うけど」

「……いや、ガキだったよ。自分で自分が、いやになるくらい」



その言葉になにか意味が含まれている気がする。けれど私が問いかけるより先に、大迫は言葉を続けた。



「けど今は、多少は大人になれたと思う。清水のこと、エスコートできるくらいにはな」



大迫はそう言って私の手を取ると、メリーゴーランドの乗り口に向かって歩き出す。

そして機材を乗り口に預けると、私の体を軽々と持ち上げて一番大きな白い馬へと乗せた。



「わっ、大迫?」



戸惑う私をよそに大迫は同じ馬に乗ると、後ろから私を支えるように座った。



体が密着する。

バーをにぎる私の手に、その大きな手が重ねられる。

その距離感に、心臓はドキドキと音を立てた。