愛がなくても、生きていける




そしてそれから数日が経ち、迎えた水曜日。

カメラや機材を入れた重い鞄を肩に下げた私がやってきたのは、新宿にあるとあるオフィスビルだった。

ビルの入り口に書かれたフロアガイドには、『6階・株式会社エヴァーグリーン』と書かれている。



「立派なオフィスビル……」



今日は大迫とともに遊園地へ撮影へ行く予定だ。

けれど大迫の仕事の予定が思った以上に押してしまったため、彼の会社で待ち合わせてそのまま車で遊園地へ向かおうということになった。



撮影だし動きやすいように、細身のデニムスキニーにテーラードジャケットという格好できたけれど……新宿のオフィス街にあるこのビルのエントランスでは少し浮いてしまっている気がする。



早く大迫こないかな……。

そわそわと待っていると、奥のエレベーターホールから背の高い姿が歩いてくるのが見えた。



あ……来た。

今日は大事な仕事があったのか、上下スーツにネクタイまで締めている。

端正なその顔立ちに、きっちりとした格好がよく似合っている。



「清水」



すぐにこちらを見て手を振った彼に、私も小さく手をあげる。



「悪かったな、わざわざ来てもらって」

「ううん、気にしないで。私もわざわざ付き合ってもらうんだし」



短い会話を終え、じゃあ行こうかと歩き出そうとした、そのとき。



「社長!」



エントランスに響いた高い声に大迫とともに視線を向けると、エレベーターの方からこちらへ小走りで駆け寄るひとりの女性がいた。

黒い髪をひとつに束ねて眼鏡をかけた、綺麗めな顔立ちの彼女が真っ直ぐに大迫へ向かってきたことから、『社長』という呼び名が大迫のことを指しているのだと気づいた。