「俺が急ぎすぎた。俺らのペースでゆっくり進んでいこ」
「……あの、なんかその、ごめ……」
「もう謝るなよ。凛李が悪いんじゃないんだから」
善はそう言いつつも、心なしか残念そうな顔をしている気がする。
前に瑠月が話していた。
"そうやって好きな人と触れ合ってたら、もっと触れたいって思うのが健全な男子なの。もっと先に進みたいって思うものなの"
その言葉を思い出すと、胸の奥が締めつけられる。
善と先に進みたいという気持ちと、まだ怖いという2つの気持ちが行き交っている。
私が覚悟を決めればいいだけなのはわかっているんだけど、それがなかなかできない……。
だって、キスだけでもいっぱいいっぱいなんだもの。
頭の中が善で埋めつくされるんだもの。
「じゃあ、部屋に戻ってる。勉強ほどほどにがんばれよ」
善は私の頭を2回ポンポンと優しく叩き、部屋を出ていった。