善は四つんばいで私にジリジリと近づいてくる。
「休憩、するんじゃないの……?」
「するよ」
「こ、ここで……?」
「うん。ちゃんと待ってたんだから、ご褒美ちょうだいよ」
「ご褒美って……」
「凛李」
「えっ⁉︎」
てっきり"キス"と言われるんだと思っていたから、びっくりしてしまった。
私がご褒美ってどういうこと⁉︎
頭をどれだけ回転させても、なにひとつわからない。
「ん……っ」
その間にも善は私との距離を縮めていて、あっという間に唇をふさいできた。
善のやわらかい唇の感触が、今日はやけにわかってしまう。
音楽もない静かな部屋に、一瞬離れたときのお互いの息づかいが聞こえ、それがさらに私の鼓動を速くさせる。
……すると、となりの部屋から瑠月の「くすぐったいー」という声が聞こえてきた。
そうだった、となりには瑠月と刀夜くんがいるんだった。
瑠月の声が聞こえてきたということは、私たちの声も瑠月たちに聞こえるということだよね?



