無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。


別にいいんだけどね。
ケンカされるより、仲がいいほうが姉としても安心できる。

なにか音楽をかけながら勉強をすればいいのだけれど、私はそれだと集中できないため、いつも勉強をするときは無音。

もちろん、玄関の扉が開く音も聞こえる。
時間を見ると2時。
お母さんかな?

そう思って、再び参考書に目を通した。

トントンーーと誰かが部屋の扉を叩いた。

お母さんだろうと思い、「はーい」と返事だけして振り返らずシャーペンを持つ手を動かす。

しかし、次の瞬間、頬にチュッと音を立ててキスをされた。
誰かって1人しかいないんだけども。



「善⁉︎ いきなりはやめてよっ」

「がんばってるところ見たらキスしたくなったんだからしょうがないじゃん」

「しょうがなくない気がするけど……。それより、バイトもう終わったの? いつも土曜日は夕方までじゃない?」

「今日はこれから新人が入るから、早く終わった」