レールを準備してあげたいのも、いうことを聞いてほしいのもわかる。
すべては善が幸せになってほしいから。

でも、善が考える幸せの定義はなんだと思う?と。
失敗してもいいから、1人でなにかをやり遂げることなのかもしれない、と。

まずは今の善のことを知ることが大事なんじゃないーーと言われたらしい。



「あんなに楽しそうな善を久しぶりに見たよ。本当にあの場所で働くことが好きなんだなと伝わった」

「……」

「親離れ、というよりも、子離れをしないといけなかったんだな。まだ、私は間に合うかな……」



車の静かなエンジン音と、ラジオの小さな音だけが聴こえる車内。

今聞いたこの言葉をそっくりそのまま善に聞かせてあげたいと思った。
横顔だけでもわかる、善のお父さんのうれしそうな満足げな顔を見せてあげたいと思った……。