無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。


後ろから聞こえてくる怒号を無視して、私はとにかく走った。
足が速いわけではないので、すぐに追いつかれてしまうだろう。
それでもなるべく遠くへーー。
こんな勝手な人たちと真剣に向き合うことなんてないんだ、逃げたっていいんだーー。

しかし、保健室から出て廊下をはじまで走ったあたりであっけなく私は捕まってしまった。

強く二の腕をつかまれ、振り向かされる。
女の子たち3人は鬼の形相で、2人は私の腕をつかんで身動きがとれないようにし、髪の長い子は私の髪の毛を鷲づかみにしてきた。



「マジでおまえ……っ」



今度こそ本当にぶたれる……。
私はとっさに目をつぶった。

……しかし、痛みを感じることはなかった。
むしろ、髪をつかまれていた手は離され、誰かが私の前に立っているのが気配でわかった。



「取り込み中悪いけど、返してもらっていい?」



低く不機嫌な声。
私の目の前には大好きな大きな背中があった。