そんな感じで他愛もない話をしながら私たちは家へと帰った。
不思議と秦くんのことは忘れていて、気持ちも少し落ちついていた。
どんなに考えてもどうにもならないこともある。
そんなときは一旦そこから離れてみるのも大事なのかもしれない。
善も私も自分の部屋の前まで来た。
「そういえば、凛李はなんであそこにいたの?」
「……え?」
「今日塾じゃないよね。夜に外に出るのも見たことないし」
「えっと……」
まさかのまさかだ。
ここにきて、私があの場所にいた理由を聞かれるなんてーー。
正直に"善に会いに行った"って言う?
自分から付き合ってることをバラしたり、手をつないだりしてるのに……?
自分でも今日の自分はおかしいと思う。
いつもの冷静さはどこへ行ってしまったの?
海を渡って遠くへ出かけてしまったんだろうか。
それなら今すぐにでも帰ってきてほしい。
調子が狂ってしょうがない……。



