ネクタイに触れたものの、そこから動かなくなった私を見てさすがになにかに気づいたらしい善はーー私の手の上に自分の手を重ねた。
自然と善の手の熱が伝わってくる。
それだけで……息をしづらくなっているのがわかった。
「ネクタイは、こうすんの」
そう言って善は手を重ねたままネクタイを下へと引っ張った。
すると、不思議なことにネクタイは簡単に緩んだ。
「ここ、引っ張って」と、抜けそうなところをあごで示され、私が言われたとおりそこを引っ張るとネクタイはするするとほどけた。
「ほどくのって案外簡単なんだね」
「今度は結ぶ練習しようか」
「結ぶのもやるの⁉︎」
「指がこんな状態じゃできそうにないし、凛李にしか頼めないし……」
「わ、わかった。指が治るまでは私がやるよ」
善がまるで、耳をたれさせ悲しそうにシュンとしている子犬のような顔をするから、私は反射的にそう答えてしまった。



