私の顔をジーッと見てくる善の口元が緩んだことを私は見逃さなかった。



「なに……? こっちは本気で心配してるのに」

「付き合ってることバレたらダメなのに、急いで来てくれたんだ?」

「別に急いだわけじゃ……」

「じゃあ、そっちの手に持ってるのはなに……?」



善がそう言って指さすのは私の背中に隠れている右手。

そうだ……。
善の言うとおり、私は急いできたため、シャーペンを握りしめたまま来てしまったのだ。
それがバレるのが恥ずかしくてとっさに背中に隠したんだけど……どうやら善に見られてしまったらしい。



「平気なら別にいいの。じゃ、戻るね」



これ以上突っ込まれてもただ恥ずかしいだけ。
そうわかっていた私は、そそくさとこの場から立ち去ろうとした……。