さっきのこれからキスしますって言ってるようなところをお母さんに見られて大丈夫なはずがない。
恥ずかしすぎて、なにも言い返せない。
「あれだけ俺には近づくなとかバレないようにしろとかうるさく言ってたのにね」
「だから、さっきのは……」
「顔についてるゴミでも取ろうとした? そんなわかりやすいウソだめだよ。凛李がくるの待ってたんだから」
「え? 待ってたってどういうこと?」
「本当に寝てたけど、起きようとしたとき凛李が近づいてくるのがわかったから寝たフリしてた。このままキスしてくれるんじゃないかなぁって思って」
「わ、わかってたの……⁉︎」
「うん」
……どうやら私はまんまと善の罠に引っかかったみたいです。
そのうえ誤魔化そうとして、恥ずかしさを通り越して自分には呆れる……。
私を抱きしめていた善の腕の力がゆるんだため、私は少しだけ体を起こした。
「俺からキスしようとしたら絶対拒否されるのわかってたから、それなら凛李からさせればいいかなって」
小悪魔のように片方の口角だけをあげて笑う善。
騙されたにもかかわらず不思議とイライラしないのは、善の天性でもあるあざとさから来ているのかもしれない。



