「となりに座るくらいなら別に……」
「誰が見てるかわかんないよ」
「それはそうだけど……」
電車でとなりに座るのは別に平気でしょ……?
私の危機感がなさすぎる?
慣れてるはずの善の冷めた声に、私は少し泣きそうになってしまった。
しばらくはスキンシップをとるのをやめようって言ったのは私なのに、言い出したのは私のほうなのに、どうして今さらこんなに弱気になってしまうんだろう。
電車のアナウンスと共に扉が閉まり、ゆっくりと電車が動き出した。
私はなるべく善に意識がいかないようにと窓から見える景色へと視線を移した。
……もし私が瑠月のように容姿に恵まれて性格も明るかったから、堂々と善の彼女として過ごすことができたのかな。
かといって、そんな考えてもどうしようもないことを結局は考えてしまう。
「……凛李」
私にだけ聞こえるように善の低く小さい声がした。
無視するわけにもいかず、私は「……なに?」と聞き返す。



