急いで階段を駆けおり、なんとか乗ることに成功した。
座席には隙間なく人々が座っていて……乗った側の座席に目をやると、1人分の席が空いていることに気づく。
……しかし、そこである人物と目が合ってしまった。
その空いている席のとなりにはスマホを片手に私のことを見上げる善が座っていた。
お互いの存在を確認したにもかかわらず、2人してなにも発さない。
あえて他の車両に行く?
いや、となりに座ってるからって別に付き合ってると思われないよね。
私と善だし……。
善も私との約束を守るためか、すぐに目をそらしてそのままうつむいて腕を組み眠り始めた。
私は少し自問自答を繰り返したのちーーなにかに誘導されるように善のとなりに座った。
体をなるべく小さくしても腕が触れてしまう。
それくらい近い距離に善がいるというだけで、おどろくほど鼓動が速くなるのがわかる。
「近くにいていいの?」
善は体すら動かずにそう口を開いた。



