「いつもみたいに鼻で呼吸すればいいのに」

「鼻息かかるの恥ずかしくて……」

「そういうこと? これから呼吸の仕方練習しなきゃね……って、しばらくはキスできないのか」

「……うん」

「残念」



眉毛をハの字にして本当にさみしそうな顔をする善に、思わず母性があふれ出てしまう。

"やっぱりさっきの約束はなしにしようか"
この言葉が喉まで出かけたところで……なんとか抑えた。

ここで善のあざとい部分に負けちゃだめ。
意志を強く持たなきゃーー。


私が心の中で葛藤していることをまったく知らない善は、今度は私の唇を指でゆっくりとなぞってきた。

こ、今度はなに……っ⁉︎
いちいちドキドキしちゃうんだからやめてほしい……やめてほしくない気もするけど……。



「でもさ、正直どうだったの」

「……え?」

「さっきのキス」

「……」

「気持ちよかった?」

「……き、きき……っ⁉︎」