そんな私の気持ちも知らず、善は完璧に髪の毛を乾かしてくれた。
私が「ありがとう」と振り返って伝えると、善は「女の子って大変なんだね」と満足げな顔で私のことを見てきた。
「でも、乾かすの上手だね」
「あー……何回か、やったことがあって」
明後日の方向を見て、少し焦ったようにそう言う善。
そりゃそうだよね。
善みたいなイケメンだったら、女の子の髪の毛を乾かしたことがあってもおかしくない。
「……その子も髪の毛が長くてさぁ、結構大変で……」
「……そう」
「あれ? なんか凛李、様子変じゃない?」
「べ、別に?」
「……もしかして、ヤキモチ妬いた?」
「は、はぁ⁉︎ こんなことで妬くわけないじゃないっ」
自分でも自分がいつもと違うのはわかっていた。
他の女の子との話を聞いて、イライラしている。
この話はもう聞きたくないーー。
それに、これっぽっちのことでヤキモチを妬いてる自分があまりにも恥ずかしい。