「見なくてもわかるなら、見なくてもいいでしょ」
いまだに善には顔を見せないように後頭部を向ける私。
「それとこれとは話が別」
「……え……?」
「俺は、凛李の表情すべてを見なきゃ気が済まないんだ」
善は少しトーンが下がった声でそう言ったあと、私の頬に触れて優しく自分のほうへと向かせた。
かたくなに向かないように力を入れてたのに、不思議と善の声と優しく触れられたことによって、いとも簡単に動いてしまった私の顔。
目の前には私をジッと見つめてくる善がいてーーこの瞬間だけは確実に呼吸をするのを忘れていたと思う。
「……ほっぺが赤い」
「……湯当たりしたからだよ……」
「それだけじゃないでしょ」
「……」
「言い返さないってことは当たってるんだね。かわいい」
「かっ、かわ……っ⁉︎」



