「なんか最近、会長あいさつのときも雰囲気やわらかくなったよね? 話のところどころで少し笑ってるような気もするし」

「……そう?」

「うん、今まで川西先輩の人気に隠れてたけど、岸会長ブームきたりして」

「ウソ、」

アキとこそこそ話してると、隣に並んでいた同じクラスの男子もそれとなく混ざってきた。

「俺、部活んとき女子部の会話とかよく聞こえてきてるけど、その中でけっこう会長の話題出てるよ」

「えっ? そうなの?」

「うん。なんでも、バスケとか、球技めちゃくちゃ上手いらしいよ。体育やスポーツ大会ぐらいでしか披露してないっぽいけど」

岸会長は生徒会役員だから部活には所属していなかったみたいだけど、スポーツも得意だったんだ。知らなかった……。

「あ、あと。副会長の長沢先輩? とお似合いで、こっそり付き合ってるんじゃないかってウワサもきいたけど」

「そっ、それは絶対違う‼︎」

……。

思ったより大きく出てしまったわたしの声で、体育館に沈黙が訪れた。

全校生徒の視線がわたしに集まって、あわててステージのほうを見ると、……岸会長までがあいさつを中断してこっちを見てる!

会長、わたしだって気づいてるんだろうか。
まずい。でもこの距離じゃ、顔までは見えないはず……

「……えー……では、そろそろみなさんも飽きてしまったでしょうから、このあたりで生徒会長あいさつを終わらせていただきます」

ガタンッ、と音を立ててマイクの電源を切って、大股でステージを降りていく岸会長。

沈黙……というよりも気まずい雰囲気が流れる。

「え……なにあれ、怖っ」

「会長って、あんな感じだったんだ?」

「しかもあれ、雑用の子じゃない?」

「身内の失敗は公開処刑、って感じ? 生徒会長おそろしー」

ざわざわといろいろな意見が飛び交う会場を、進行係を務めていた長沢先輩が無理やり進めていき、なんとか終業式は終わった。

「……会長ブームくるかも、って言ったの、取り消すわ」

苦笑いしてそう言うアキの意見に、少し安心する気持ちが2割ぐらい。あとの8割は、

(後でめちゃくちゃ怒られるんじゃないか……⁉︎)
っていう心配で、なんだかめまいがした。