「お前な、……どんだけ単純なんだ」

「へ?」

「勉強するようになってからはマシになってきたと思ったけど、やっぱりアホだったか」

「か、会長?」

岸会長はわたしの両肩に手を置く。あまりにその距離が近くて、びっくりしていると。

「安心しろ。その気持ちは、『勘違い』だ」

真剣な声でそう言った会長。話についていけなくて、困惑する。

「え……、えっと」

「今まで一緒に勉強してて、距離が近かったからそう思ってるだけだろ。なぁ、川西」

「え? 俺?」

急に話をふられて、川西先輩も困った様子で。

「それは、陽菜子ちゃんにしかわからないことだと思うけど……」

って呟いた川西先輩の声がやけに遠くに聞こえた。

……カンチガイ。
やっぱり、近くに仲のいい男子とかいないから、会長とよく話すようになって余計に舞い上がってるだけなのかな。

「これからも勉強会やるんだろ? 余計なこと考えんなよ」

苦笑いした会長の、目が見れない。

「そう、ですよね……。変なこと言って、ごめんなさい」

これでいいんだよね。でも、なんだかモヤモヤが止まらなくて。

「……今日は、お先に失礼します」

「あ、陽菜子ちゃん⁉︎」

生徒会室を飛び出したわたしを、呼び止めてくれたのは川西先輩の声だけ。
もちろん、岸会長が追いかけてきてくれる、わけがない。

学校から離れて、とぼとぼと歩きながら思う。
また、次からなんでもない顔をして、会長に会わなくちゃいけないんだ。

わたし、ちゃんとできるかなー……。