「さわがないでよ〜……!」

「ごめんごめん、でもうちらは、そのうちこうなると思ってたよ」

「え、ウソ……」

「陽菜子ちゃん、イヤだイヤだって言いながら、会長の話ばっかりしてるんだもん」

わたし、そんなに会長のこと言ってたかな……。自覚がないって、おそろしい……。

「……単純すぎかな。まだ知り合って1ヶ月ちょっとぐらいなのに」

それに、会長はわたしとの交換条件で、勉強を教えてくれているだけ。
今、一緒にいれるのも、一言でまとめたらわたしが生徒会に入るかもしれない可能性があるから。
もしもわたしが「マンガアニメ同好会は諦めます。生徒会には入りません」って言ったら、きっともう関わることはなくなるだろう。

「いやー、恋なんてそんなもんでしょ! マンガでもよく、連載の一回目ぐらいで恋に落ちてたりするし!」

「一応現実なんだけど……」

「期間とか、理屈とかじゃないってことでしょ?」

ミナミはたまに、核心ついたようなことを言う。

「うーん……、てか、恥ずかしいけど……。今まで付き合った経験とかもないし、「いいな」って思う男子がいても見てるだけだったから。こんなふうに、直接話せたり連絡先知ってたり、っていう関係の相手を好きになったことがないから、どうしたらいいかわからないんだ」

いくら「マンガみたいな恋したい」って思っていても、実際の男子にはあんまり縁がなくて。
ツンデレの幼なじみもいなければ、みんなに優しい人気者のクラスメイトなんて神様みたいな存在にも巡り合うこともなく、約十六年間生きてきた。

でもきっとそれが「普通」で、現実なんてそんなもんだよね、って思いながら、クラスにカップルができたりすると少しうらやましかったりして。
ある意味、恋愛に憧れてたんだと思う。

……つまりわたしは、そのぐらい恋愛初心者だ。