食べてくれたんだ。会長の好きな味だったかな。

糖分で、少しは疲れが取れただろうか。

……ハートの形のクッキーを入れたの、気づいたかな……。

基本は、丸型と星型。だけど岸会長の袋にだけ、こっそりしのばせたハート型で抜いたクッキー。

(……わたし、会長に、どっぷりハマってるみたい)

こんな幼稚でわかりにくいアプローチをして、わたしは一体何がしたいんだろう。
会長と、どんな関係になりたいんだろう……?

恋人同士? でも、相手は三年生で、来年は卒業して大学生になっちゃう。
今までみたいにたくさん顔を合わせられるわけじゃない。

そもそも岸会長とわたし、釣り合ってるわけがないんだ。
たとえば、「好きです」と伝えたところで、「そんなくだらないこと言ってる暇があったら勉強しろ」って言われるのがオチだと思う。

『お口にあったなら、よかったです』

そう返信して、それ以上返事は来ないだろう、と思っていたら、数分後にまたスマホが鳴って。

『できればまた食いたい』

「!!」

そのメッセージを見た瞬間、体の血液が沸騰しちゃったみたいな感覚だった。

『また今度、作りますね』
って返したら今度こそメッセージのやり取りは終わってしまったけど、嬉しい気分。

完全に、会長の言葉に一喜一憂するようになってしまっている。

(この気持ちは、どこに行くんだろう……)
わたしはため息をついて、マンガが詰まった本棚を眺める。そういえばしばらく手にとっていないと思って、お気に入りの一冊を抜き出した。

二次元の相手なら、こんなふうに悩まなくていいのにな、なんて。
こっちを見て微笑むキャラクターを眺めながら、ぼんやりとくだらないことばかり考えた。