「ねー、岸くん、ここは?」

「……一年の問題だろ。なんでわかんねーんだよ」

「覚えてないものは覚えてないんだもん」

「そうだ、コイツに聞いてみろ。この間教えたばっかりだから」

「そうなの⁉︎ 陽菜子ちゃん、教えて?」

川西先輩が差し出してきた問題集を、じっと見る。数学の、見たことある公式のような……。

「……ここに代入して、この二がここにきて……、あ、こうですかね?」

教える、なんてできるはずもなく、とりあえず解いてみた。
ポカンとする川西先輩と、わたしが書いた答えをじっと見る岸会長。

「……正解だ」

会長がそうつぶやいた。
川西先輩があわてて巻末の解答を確認すると、わたしが書いたものと同じ数字。

「す、すっげー! 陽菜子ちゃん、ほんとに頭よくなってるじゃん!」

「よかった、当たってた……」

これでもし解けなかったら、会長に怒られるに決まってる。
呆れられて、ため息をつかれるのもイヤだ。

ホッとして、ちらりと会長のほうを見ると、

「よくやった」

そう微笑んで、岸会長はわたしの頭をポン、と撫でた。

(……な、なにそれ!!)
顔から火が出そうなぐらい、一瞬で熱い。
会長の手はすぐ離れたけれど、頭も、顔も体も、全部沸騰してるみたいに感じる。

なにも言えず口をパクパクさせるわたしに、目の前にいた川西先輩はニヤニヤしながら言った。

「陽菜子ちゃん、真っ赤だよ?」
「!!」

「岸くん、今のはセクハラじゃない〜?」

「うるせぇ、いいんだよ、俺は」

いいんだよ、って、なにが。いいわけない、ずるい。