……マンガを一本仕上げて、投稿して、なんらかの賞をもらう。

そうすれば活動として実績が認められるんじゃないか、と言いだしたのはアキだった。

アキは、少女マンガっぽい人物を描くのが上手。
ミナミは美術部で、建物などの背景を描くのが得意だ。

わたしは……、話を考えるのが好き。
幼いころから本を読むのも好きだった。
マンガやアニメを観てドキドキすると同時に、こんなストーリーが思いつくようになれたら、って思う。




放課後。なにか話づくりの参考になるものがあれば、という気持ちで図書室に向かうと、室内は静まり返っていた。

意外に勉強して帰る生徒も少ないみたいだ。
カウンターに図書委員の人が退屈そうに座っているだけで、あとは自習テーブルに突っ伏して寝ている生徒が一人……。


髪の短さ的に、男子生徒だということは遠目からでもわかった。
近付いてみると机の上には、たたまれて置かれた黒縁の眼鏡。
上半身を伏せて、でも窓のほうを向いて寝ているその横顔は。

(きれいな顔……)
 スッとした高い鼻、閉じられた瞳の、長いまつげ。
こんなにカッコいい人、この学校にいたんだ。
何年生だろう、と興味を抱いて、眼鏡の下に置かれたノートの名前を見ると。


「……え」
その表紙には、「3❘5 岸遥真」の文字。
ちらりと見えた襟元には、……生徒会役員であることを示すバッジ。

(か、会長じゃん……‼︎)
目の前で寝ているのは、わたしの憧れの、生徒会長・岸遥真先輩だった。