「今日は岸くんの金魚のフンじゃないのね」

会釈だけして通り過ぎようとしたわたしに、長沢先輩は声をかけてきた。

ひどく冷たい声色のそれは、明らかな「敵意」を持ったもので。

「……はい、今日は特に呼び出しを受けていないので」

「そう。休み時間に教室でも仕事してたみたいだけど?」

「会長は、必要なときにだけ呼んでくださるので……」

あ、今の言い方はマズかったかも。

そう気付いたときには、長沢先輩の眉間にはシワがよっていた。

「へぇ。ずいぶん信頼されてる自信があるのね。生徒会の人間でもないのに」

会長の小間使い、という立場で生徒会に招かれたわたしに、他の役職付きの先輩方は好意・哀れみの目・もしくは興味がないという態度で接してくる。

しかし、彼女だけは違う。
どう考えても「邪魔」だと言わんばかりの言動。

……わたしの想像だけど、きっと、長沢先輩は岸会長のことが好きなんだ。