最終下校のチャイムが鳴ったころには、すでに日が暮れていて。

「今日やったとこ、家帰っても見ておけよ」
「は、はい……」

とぼとぼと歩きながら校門を出て、挨拶して帰ろうとすると、なぜか会長も同じ方向に一緒に歩いてきていた。

「……会長もこっち方面なんですか?」
「違うけど?」

「じゃあなんで……」

「……もう暗いんだ、一人で帰すわけにはいかないだろ」

そう言ってスタスタと歩き出す会長に、混乱する。

「えっ、えっと、私の家、近いんで大丈夫ですよ⁉︎」

「関係ねぇよ、さっさと行くぞ」


歩いても十五分程度の道のりを、岸会長と並んで歩く。
男子と二人きりで帰る、なんてもちろんはじめての経験だ。

「あ、あの……会長」

「なに」

「会長って……」

『本当は優しいんですね』とか、『二人きりで帰ったりして、見られても平気なんですか』とか、『付き合っている人はいないんですか』とか。
いろんな思いが浮かんだけど、うまく言葉にならなくて。

「すみません、なんでもないです」

って謝ったら、会長はなにも言わなかった。


やがて着いたわたしの家の前で、「本当に近いんだな」と会長がつぶやく。

「ありがとうございました……、送っていただいて」
「このぐらい、たいした距離じゃない。それより復習、頑張れよ」

それだけ言って今来た道を戻って行く会長に、これまた言葉に表せない気持ちがこみ上げる。
会長イコール極悪人、というイメージが、自分の中で少しずつ薄れてきていることに気付いた。