授業が終わって、しばらく机に伏していたけれど、覚悟を決めて立ち上がった。
恐る恐る階段を上る。
生徒会室があるのは、北校舎の四階、一番隅のひっそりした場所だ。

(一体、何を言われるんだろう……)

泣きそうな気持ちで、遠目から生徒会室の扉を眺める。
できることならば、これ以上は近付きたくない。

そうこうしているうちに、十六時を少し過ぎていた。
一度トイレに行って落ち着こう。そう思って背を向けた、そのとき。

「ひーなこちゃん。待ってたよ。早く入りなよ」
「ひゃっ⁉︎」

後ろから肩を叩かれて、振り向くと川西先輩。
これってなんだか、デジャヴだ。
そしてそのまま、背中を押されて生徒会室へ。

……一歩足を踏み入れると、そこはまるで学校ではないみたいに綺麗な空間だった。

「あ……」

目の前の大きな机に肘をついているのは、岸会長。
もっと、書記とか会計とか他の先輩もいるのかと思っていたから、会長と川西先輩しかこの場にいないことに少し戸惑った。

……岸会長は、じっと私の顔を見ている。
今日はいつもの、分厚い黒縁の眼鏡姿だ。
だけど私は、その奥の瞳が大きくて鋭いことを、知っている。

まるで、心臓を射抜かれているような、そんな感覚――……。

「……俺がお前に勉強を教えてやる」

 ……え?