岸会長がその場で頭を下げたから、わたしも慌てて深く礼をした。

すると、シンとした体育館内に、……響く二つの拍手の音。
舞台の袖から聞こえて、そっちを見るとひかりちゃんと川西先輩が笑顔で手を叩いていた。

それをきっかけに、観客席からもちらほらと音が鳴り、最終的には体育館中が大きな拍手につつまれた。
すごい。これが岸会長の影響力……。

「おい、ぼーっとしてんな。行くぞ」

「え、あっ、はいっ」

「……泣くな、って言っただろうが」

涙の跡が、バレていた。目も赤かったのかもしれない。
わたしは会長に促され、舞台の袖にはけた。

目の前を歩く会長に、聞きたいことがたくさんある。
言いたいことも、たくさんある。

だけどそれがあまりにも多すぎて、何も言えないうちに、ひかりちゃんと川西先輩が駆け寄ってきた。

「陽菜子ちゃんすごい、かっこよかったよー!」

「えっ、そ……そうかな?」

「うん! なんかわたしたち情報科のことも、考えてくれてて嬉しかった」

そう言って笑うひかりちゃんに、胸が暖かくなる。
たった一人でもそう言ってくれるなら、主張したかいがあるな、と思った。