「会長……どうして……」

あまりの驚きで、壇上にもかかわらずそんな言葉がこぼれた。

だって岸会長は、今日は受験に行っているはず。

夢なんじゃないかって思ったけれど、まっすぐ前を見ているその横顔は、紛れもなく岸会長のもので。
安心して余計に泣いてしまいそうになるのを、会長に言われてた通りにグッとこらえた。

いきなりの会長の登場で、それまでうるさかった体育館が静まり返る。
沈黙の中、会長は再び口を開いた。

「えー……、ここにいる、橋本陽菜子さんは、「努力」ができる人間です」

……こんなに近くにいるのに、マイク越しのスピーカーから聞こえる声。
会長が、わたしのことを話している。

「彼女の演説にもあったように、マンガアニメ同好会は廃部がほぼ決まっていました。……それをどうにかしようと、僕に直接交渉しにきた」

まるで思い出をたどるような会長の言葉。
わたしは目を閉じて、その光景を思い出す。

「いくら突っぱねても、彼女は諦めようとはしませんでした。決まっていることを覆すのは難しいと言っても、心のどこかで希望を捨てない。単純ではありますが、僕自身も学ぶこともあった」

会長、わたしのこと、そんなふうに思ってくれてたの?
それとも、もっともらしい台詞を並べただけ?

……でも、どっちだとしても、会長がわたしのことを考えて紡いでくれている言葉なのは事実で。