「えっ、立候補、したの⁉︎」

わたしの報告に、アキが大声をあげる。ミナミも静かに目を見開いた。

「陽菜子ちゃん、何かあったの……? やっぱり、わたしたちがマンガアニメ部のこと任せたから……」

ふたりにすごく心配されたけど、首を振る。

「ううん。……正直もう、それはあんまり関係ないんだ。ただわたしの、プライドっていうか、気持ち的にっていうか」

自分でもうまく言えなくて、不安は大きいけれど、とりあえず笑顔で。

「アキ、ミナミ。選挙用のポスター描くの、手伝ってくれる?」

「……うん。もちろん」

「よし! 誰にも負けない、すごいの作ろう!」

マンガを描く手は一時中断して、不安をごまかすようにポスター作りに打ち込んだ。




ポスターの掲示、チラシ配り、あいさつ運動。

高沼先輩をはじめ、他の候補者がやっているような選挙活動はひととおりやった。
……目立てている自信はないけれど。

でも、一部の人からは「岸生徒会長の雑用係」という認識はされているみたいだ。
それが"生徒会の経験者"という肩書きにつながればいいな、と思う。

篠塚先輩たち、現生徒会役員が密かに「頑張ってね」と声をかけてくれたのも心強い。
……岸会長と副会長ふたりとは会っていないけれど。

そして、瞬く間に迎えた、九月二十五日。
生徒会役員選挙の候補者演説がはじまるのは午後一番から。
その日は緊張で、お昼のお弁当も喉を通らなかった。