「長沢先輩に妹さんがいたなんて、知らなかったよ」

「えー、そうなの? お姉ちゃんとは、生徒会のときあんまり話さないんだ?」

「え、えっと……」

ひかりちゃんは、わたしが長沢先輩から嫌われていること、知らないのかな。

チラリ、と横目で岸会長を見ると、それまで黙っていた会長が気まずそうに咳払いをした。


「……ひかり、何してんだこんなところで」

話題を変えるのが下手だな、って思ったけど、ひかりちゃんの顔は会長の方へ向く。

「わたしは、同じクラスの友達と遊んだ帰りなんです。……それより、二人はデートですか⁉︎」

付き合ってるの⁉︎ と大きな声をあげたひかりちゃんに、会長と二人揃って噴き出した。

「えー、わたしはまだちょっとだけお姉ちゃんのこと応援してたけど、陽菜子ちゃんも可愛いからしかたないか〜」

「いっ、いや! 違うの! 今日はたまたま会っただけ! 可愛くないし、付き合ってない! ね、会長!」

「……ああ」

(こんなふうに夏休みに学校の外で会っていたこと、長沢先輩に報告されたら大変なことになる……!)

そう思って全力で否定して、会長も同意して。
そのうち納得してくれたのか、ひかりちゃんは面白くなさそうに口を尖らせた。
その表現は長沢先輩に似ていて、やっぱり妹なんだなぁ、と感じる。

「だから長沢先輩には今日のことは言わないでね!」

「……わかった……。あ、じゃあその代わり」

お願いがあるの、と言うから、内心ビクビクしながら「わたしにできることなら……」と返す。