「……川西」

「ダメじゃん岸くん、生徒会長様が女の子と図書室でイチャイチャ騒いでちゃ。図書委員の子、困ってるよ?」

「そういうわけじゃないっての……」

会長の目線の先……振り向くと、ニコニコ笑っている男子生徒が立っていた。

彼は、生徒会副会長の三年生・川西先輩だ。
爽やかで、背も高くて、いつでも笑顔で。
女の子たちがキャーキャー騒いで、ファンクラブまであるのも頷ける。

「ふ、副会長……!」
「で、君は? 一年生かな?」

川西先輩は、笑顔でわたしの顔を覗き込んだ。
うう、イケメンの破壊力……!

「……橋本、陽菜子です。一年三組です」

「へぇ、陽菜子ちゃんか。岸くん知り合い?」
「知らん」

会長の返答を聞いた川西先輩は、目を見開いた。

「えっ、岸くんが女子と仲良く話してるなんて珍しいから、てっきり知り合いなんだと思った!」

「だから仲良くなんてしてないっての」

どこか楽しそうな川西先輩と、見るからにイライラしている岸会長。
じゃあ、何話してたの? と聞いてきた川西先輩に、わたしは事の経緯を話す。

すると川西先輩は拍子抜けしたような顔をして、そして声を出して笑った。