『陽菜子ちゃんの、電話番号教えてくれない? 生徒会で、緊急時の連絡用に登録したいんだ』

そんなお願いの下に、キャラクターがペコリと頭を下げているスタンプ。

川西先輩らしいな。でも、わたし、生徒会のメンバーじゃないのに。
そう思うけど、メンバーとして認められてるような気がして、まんざらでもない気分。

『お久しぶりです。元気です! わたしの電話番号は、090〜』

そう返事をすると、すぐに“Thanks‼︎”と書かれたスタンプが送られてきた。

(電話番号、かぁ……)
メッセージのやりとりも無料の通話もアプリでできるから、誰かに電話番号を教えるってめずらしいかもしれない。

アキとミナミの連絡先だって、アプリのアカウントしか知らない。
アプリがあれば充分だけど、電話番号まで知ってる関係って、なんとなく特別だよね。

思いがけない川西先輩の連絡からそんなことを考えていたら、もう10時を過ぎていて。

わたしは本来の目的を思い出したけど、さすがに今から会長にメッセージを送るのは遅いかな、なんて諦めかけた。
すると、

“〜♪“

普段あまり聴かない、軽快な音楽が鳴り響く。
それが電話の着信音だと気づくのに、ちょっとだけ時間がかかった。

(え……川西先輩かな?)
スマホの画面に表示されているのは、090で始まる、見知らぬ電話番号。

川西先輩がわたしの電話番号を知らなかったように、わたしも先輩の電話番号は知らない。
何か用があったのかな、と、少しドキドキしながら「応答」ボタンを押す。

「……は、はい。あの……」

『―……もしもし?』

「‼︎」

電話の向こう側から聞こえてきたのは、よく知っている低く優しい声。