「……でも、夏休みに入って、ネーム描いてたら、やっぱり「同好会を辞めたくない」って気持ちが、大きくなった。2人の言うとおり、わたし、最初の目的忘れてたんだね」

ずっと、会長のことばかりで。
実際の片想いにどっぷりハマっちゃって、大好きな漫画やアニメを見る日も少なくなっていた。

ふぅ、と息をついて、自分の部屋を見回す。
好きなキャラクターのポスター、棚いっぱいにそろえた漫画やDVD。

それらにたくさんドキドキさせられたみたいに、自分でも誰かをドキドキさせられるような、こんな作品を作りたい。

「ごめんね。……わたし、もう、自分のやりたいこと見失ったりしないから」

そう謝って、ネームを描いたノートをテーブルの上に差し出す。涙がこぼれそうだったから、あわててうつむいた。

……すると。
「……っ、ぐすっ」

わたし、泣かなかったはずなのに。そう思って、聞こえた涙声に顔を上げると。

「ひ、陽菜子〜。こっちこそごめんね、会長のことばっかり、なんて言って!」

ボロボロ涙をこぼしているアキと、鼻を赤くしているミナミがいて。

「な、なんで二人が泣くの……」

それを見たら、こらえていた涙が自然にこぼれてしまった。

「だって、本当は、陽菜子が会長にとられたみたいで、さみしくて、あんなふうに言っちゃったの……!」

「……最初に勇気出して、マンガ部のこと会長に頼んでくれたの陽菜子ちゃんなのに……、わたしたち、何もしないで陽菜子ちゃんに任せっきりだった……」

「そんなの、二人は何も悪くないよ〜!」

なぜか、三人揃って泣いてる。
不思議な光景だと思うけど、素直な気持ちをさらけ出すことができたのは少し嬉しい。

「わたしたち、陽菜子のこと、全力で応援する。生徒会も、会長のことも」

「……でも、無理しないでね? たまにはわたしたちのことも、頼ってね」

同じ趣味で、出会った友達。
この先、わたしがなにか間違ったら、軌道修正してくれるのはきっとこの2人だ。

……改めて、この三人でよかったな、って思った。