「ありがとう、来てくれて。それで、その……」

「陽菜子、」

わたしの部屋でテーブルを挟んで座ったアキとミナミは、なんとなく浮かない表情でわたしの名前を呼んだ。

「あのさ、……無理しなくていいよ? 同好会のこと」

「え?」

小さな声でそう言ったアキと、黙ってテーブルを見ているミナミ。驚いていると、アキはさらに言葉を続けた。

「同好会のために生徒会の手伝いするの、大変でしょ? 今更になっちゃったけど、何か別の方法考えようよ」

「アキ……」

「陽菜子にばっかり、やらせてごめんね」

すると、顔を上げたミナミも口を開く。

「……最悪、一度廃部になっても仕方ないと思うんだ。人数をそろえて、改めて発足させるとか、手はあるはず」

「ミナミ、」

申し訳なさそうに眉を下げて言ってくれる二人に、チクリと胸が痛む。

『だって、マンガアニメ部存続のためには結局生徒会とつながりを持つしかないから、今はそっちで頑張ってるんじゃん』

……わたしがそんなことを言ったから。気遣わせてしまったんだ。
生徒会にいるのは、マンガアニメ部のため、だなんて。自分に都合のいい理由づけなのに。

「ちがうの、二人とも」

ようやく話し出したわたしを、二人はじっと見てくる。

「アキとミナミの言う通り、わたし、同好会を理由にして会長の近くにいたかっただけなのかもしれない」

自分の気持ちを正直に伝えようとすると、なぜか涙が出ちゃいそうになる。だけど今は、グッとこらえた。

「あのね、最近決めたんだけど、役員選挙に出ようかな、って思ってるんだ」

「えっ!?」

「選挙って……9月にある?」

「うん。……でもそれも、結局は“会長にふさわしい存在になりたいから”っていう気持ちがきっかけで」

会長に告白して、フラれて、自分に自信を持ちたくて。
テストで学年五十位以内に入ることと、マンガアニメ同好会の存続を目標にしたんだ。
そして、そのために生徒会選挙に立候補する。
その気持ちをしめるのはやっぱり、「岸会長への想い」が大きかったけれど……。