女の子は、僕とリオンをまっすぐ見つめていた。その目は美しいピンク色をしている。いや、蛍光ピンクみたいに派手な色じゃなくて淡い桜色といった方が正しいしれない。肩にかかっている黒髪が、風で揺れた。

ドクン、と心臓が不思議な音を立てた。美しいその目をずっと見ていたいと思っている自分がいる。この気持ちは一体何なんだ?

「ノワール?」

リオンに見つめられ、僕は「ごめん!」とやっと女の子から顔を逸らすことができた。でも心臓がうるさい。一体何なんだ?

「ノワール?」

女の子が何度も呟く。僕がもう一度女の子を見ると、女の子は目を輝かせていた。まるで、可愛いお菓子やドレスを目の前にした時みたいに。

「ノワールってもしかして、あの小説家のノワール先生ですか!?」

女の子に見つめられ、僕はドキドキしながら「そうです、僕はノワール。こっちは兄のリオン」と言う。女の子は瞳を輝かせたまま、僕の両手を包んだ。