Young days

この日、秀晴は七琉美の家で食卓を囲んだ。


『あっ、待って。』


七琉美は"いただきます"を前に席を外した。すると、父の部屋から母の写真立てを持ち出し、皆の見える位置に置いた。


父、秀晴、莉乃が不思議そうな顔で七琉美を見ると、恥ずかしそうにこう言った。


『…姉貴の送別会だから、母さんも。』


父は秀晴と目を合わせ微笑んだ。

莉乃は言葉にならず七琉美の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。


『あっ、ちょっと!ご飯食べるのにッ。』


3人は笑った。こんな夕飯は何年ぶりだろうか…。


『てか、光も呼ぶ?』


秀晴はスマホを出した。


『アイツはいぃよ。仕事でも、家でも俺の顔見てたら気が休まらんだろ。』


『…だからか。可笑しいと思ったんだよ。大学から戻ったのに親父んトコ住むんだ〜って引越し手伝ったの、そうゆう事?』


『これは親父の提案だったけど、光の為にもそれでいぃと思ってね。親父は去年会長になったし、光を溺愛してるから問題無いが、誰だって上司が家に居ちゃ気が安まらん。』


それを聞いて、皆が頷いた。


食事を終えると、洗い物をする莉乃に七琉美はあの言葉を伝えた。


『姉貴…。』


『んッ?』


『俺…アイツら居るから、大丈夫。』


莉乃は泣きそうになった。


『……うん。よかった…。ホッとした!』


精一杯の笑顔で答えた。


『うん。』



リビングで缶ビールを片手に微笑んだ秀晴。



『じゃあ、帰って風呂でも入るかなッ。』



立ち上がって玄関へ向かうと、莉乃と七琉美が見送った。



『莉乃、明日気を付けてな。』


『うん。ありがとう。』


『俺の飯が恋しくなって泣くなよ〜?』


『うぅぅぅぅ〜ッそれは約束出来ない!』


『バーカ。じゃあな!おやすみッ。』


『おやすみッ!!』



お風呂から上がった父は母の写真立てを持って自分の部屋へと向かった。



『ナル先お風呂入っちゃいな?』


『…いぃよ。姉貴明日早いんでしょ?』


『え、いいの?』


『うん。俺今日ほぼほぼ家に居たし…。』


『あっ、そうだった…。じゃ、お言葉に甘える〜。』


七琉美は部屋へ向かって新しいスマホを箱から出すと充電を始めた。


莉乃が紙袋の中に入れたメモには、莉乃と父、兄、秀晴4人のスマホナンバーしか書かれていなかったが、他5人と亡き母が生前使用していた番号だけはタブレットPCのアドレス蘭にきちんと保存されていた。