Young days

『……先に読んじゃった事、ごめんね。』



手紙を渡し、七琉美が家に帰ろうとすると秀晴は慌てて呼び止めた。



『おいッ!ちょっと…ッ、どこ行くんだよ?』



『…え?あっ…1人で読んだ方がいぃかな?って…。』



『…え?』



『多分、その方がいぃ。
きっと、泣くから…ヒデオジ。』



『…なんだよそれッ。』



『じゃあ…。』



七琉美は帰って行った。




1人になった秀晴はカウンターの椅子に座り、そっとその手紙を開いた。






"現世の私はとても幸せで
 この人生に何一つ悔いはない。
 むしろ愛しい。

 だけど、
 もし来世の私が
 再びあなたと出逢えたなら
 その時はこの想いに応えたい。


 ハル君、ありがとう。"





秀晴の目からポロポロッと涙が溢れ落ちた。



これまで、秀晴の事を"ハル君"と呼んだのは華奈緒ただ1人だ。



秀晴が決して口にする事も、顔に出す事すら許されなかった長きに渡るたった1人の秘事の筈だった。これは、ただ側で想い続けた忘れ得ぬ初恋の相手から届いた現世の自分と来世の自分へと向けられたラブレターだった。


息が苦しい程に涙が止まらない。愛しくてたまらない人の字で綴られた想い。伝わっていたのだと…これまで自分の中で秘めてきた想いが一気に溢れ出た。



『…絶対…見つける…ッ
 …来世でッ…必ずッ…。』



秀晴は、BARの準備をやめて店を飛び出すと車に乗り込んだ。エンジンをかけ無音で走り出した車が向かった先は華奈緒の墓だった。



『華奈緒さん…。いつから…いつから分かってたの?俺、結構自信あったんだけどな…。ずるいょ…。だって俺、告ってもないのに…これ、現世でフラれてんじゃん。叶わないって分かってたけど、とっくにフラれてたなんて…。今の今まで気付かずに、馬鹿だねぇ…俺ッ。』


秀晴は涙を拭いながら首を縦に振った。


『もう…声に出して、言っていぃかな?
華奈緒さんッ、ずっと…あなたのことが好きでした。好きで、好きで、大好きでした…。来世の俺は、宇宙一の幸せ者になるんだから今はこっちでもう少しだけ頑張ってみるよ。
…ありがとう…ありがとう。』


秀晴は自分の想いを初めて心ではなく、声に出して伝えた。あえて想いを過去形にした事で秀晴はやっと、この初恋に区切りを付けたのだ。