「それはウチで働く、ってことでオーケー?」
「はい! よろしくお願いします!」

 今まで養ってくれていた女達に好評だった「加護欲をくすぐられる」らしい笑顔を浮かべて、元気よく返事をする。しかしその笑顔に反応することなく、彼女の視線は俺から悠真へと移った。
 何を言うでもなく、ぱちりと一度だけ瞬きをして、再び己の方へと戻ってきた視線。移動する前のものとは違い、戻ってきたそれは身体の内側を抉るような鋭いものになっていて、ひく、と口端が小さく動いた。

「明日からでも来れる?」
「え、あ、」
「凪沙、こいつ宿なし無一文。ついでに言うと携帯も」
「なるほど。手ぶらなのはそういうことね」
「……はは、」
「今日からでも平気か?」
「いいよ、別に」

 見た目は超絶タイプだけど、中身は多分、相容れない。
 単なる直感でしかないけれど、己の勘は割りと当たる。何より、あの、探るような、触れられたくないところを容赦なくつつくような、そんな視線を向ける人間が俺は苦手だ。

「じゃあ、ゲンくん」
「っ、は、はい」
「家ん中、一応、案内するね」
「あ、はい」
「ユウにぃはもう帰ってねうるさいから」

 気付けば彼女の視線は、デカイ液晶へ。
 かち、かちゃ、とコントローラを操作してゲーム画面を閉じようとしているその後ろ姿を見ながら、「へぇへぇ、帰りますよ」と(のたま)う悠真に頼むから帰らないでくれと心の中で願った。