どうやら、ここが目的の場所らしい。

「凪沙、入るぞ」

 一声かけて、しかし返事は待たず、悠真はそれを開けた。

「おい、凪沙」

 瞬間、ばしゅん、ばしゅん、ばしゅん、と何やら物騒な音が鼓膜を抜けた。

「凪沙!」

 声を荒げる悠真。その視線をたどれば、頭のてっぺんで結わえられたもさもさのお団子。若干丸まった背中に、胡座をかいているからだろう左右からのぞく膝。
 見えているそれらの向こう側には、何インチか分からないくらいにデカイ液晶。そこに映し出されているのは、空を飛びながら火を吐いている赤い生物と、それを小脇に抱えた筒状のもので攻撃している人形の生物。
 筒状のそれはおそらく銃とか、そんなカンジのものなのだろう。何か、ピュンピュン、ピュンピュン、赤い生物に向かってとんでいってるし。

「凪沙ッ!!」

 仏の顔も何とやら。
 わりと底辺を生きている自覚のある俺でさえ、こんな風に悠真に怒鳴られたことはない。
 真後ろで、しかも大声で、語尾まで強められて呼ばれてンのに、微動だにしねぇとか逆にすげぇな。
 なんてことを思ったのとほぼ同時に、クエストクリア、の文字が液晶に浮かぶ。

「そんな怒鳴らなくても聞こえてるよ、ユウにぃ」
「なら返事しろ!」

 だから、だろう。
 くるりと、その人が振り返った。