ちらりと、悠真の視線がこちらへと向く。そして、しばしの沈黙。それを破ったのは、ポーン、という箱の開口の合図だった。

「……何つうか、ダチの妹なんだけど、」
「へぇ……え、待ってそれじゃ俺らより年下……?」
「俺より三つ下、お前より一つ下」

 箱から降りて、悠真の口から静かに吐き出されたその音。どこか話しにくそうにしているのが少し気になったけれど、それよりも気になるものが眼前に現れたせいで、そこに意識を取られた。

「年下に雇われンの、俺」
「金は稼いでるけど、それ以外が全然ダメなんだよなぁ」
「まぁ、こんな要塞みてぇなとこ住めてンだから金はあンだろうな」

 透明な、けれども、正面からでも分かる分厚さのガラスの壁、の、ような扉。アクション映画でしかみたことないようなそれはやはりと言うべきか、右側に備え付けられているそこへ悠真が持っているカードキーっぽいものをかざすことで開いた。
 が、開けた視界のその先に、またしても同じようなガラス製の扉。全くと言っていいほど同じ見た目のせいで、ひとつめの扉が開くまでその存在は初見じゃまず見破れないだろう。

「まぁ、防犯に力入れてるからな。あいつ」
「……へぇ」

 てくてく、てくてく。
 エレベーターを降りてから、壁のような扉はあれど、一本道のそこをしばらく歩いて、ようやく俺達は玄関かと思われる扉の前へとたどり着いた。