はぁ。
 彼女の、ぷるつやな桜色の唇から少し重めのそれが吐き出された。

「私が一緒に観たいと思ってるのはゲンくんだよ」

 ああ、もう、やめてくれ。
 一縷(いちる)の望みもないのに、これ以上、好きにさせないで欲しい。