真琴が大学に入学する頃に就職先は地元の役場が良いと話している事を真琴のお義母さんから聞いていた。
その時に真琴の就職先は俺の現住所が置かれている役所にしよう。と決断した。

『もしもし?玲くん?
 折り入って頼みがあるの。』

「お久しぶりです。
 真琴に何かありましたか?」

『あのね、恥ずかしい話なんだけど…こんな話を玲くんにしたって聞いたら真琴に怒られちゃうから内緒ね…。
 実はね、この前の公務員試験に落ちちゃって。
 あの子ったら、間違いなく受かるって殆んど試験勉強なんてしてなかったのに、どこからの自信なのか分からないんだけど。
 そしたら、見事に落ちちゃってね。』

想定通りに事が進んでいる事に陰ながら安堵する。
真琴には悪いが地元の役場には落ちてもらい、俺の希望する役所に受かってもらう。
その為に勉強の手助けをしたなかった。
それぞれの試験のスケジュールを調べて思い浮かんだ策だ。
俺の希望する役所が後手ででなかったら面倒だったが安心した。

「ええ。
 それで、真琴は元気ないんですか?」

「ううん。
 元気なんだけど、就活しないで就活浪人するって言い出して私もパパもどうしようかって困り果ててるの。
 玲くん、何処か良い就職先はないかしら?
 突然の電話で唐突な事を言ってごめんなさい。
 迷惑だったら全然、お断りしてね。」

「いえいえ。
 お義母さん、実は僕も真琴に良いなと思う就職先を見つけたのでご相談しようかと悩んでいたんです。
 そこも公務員なんです。
 真琴のやる気次第では僕が家庭教師をします。
 どうですか?」

もちろん、この提案には一つ返事で返答を貰った。
翌日には願書を手に真琴の家にと足早に向かった。
この時の為に取っておいたありったけの有給や夏期休暇、冬期休暇をフルに使って真琴を自分のテリトリーへと導く。