駅前だと直ぐに見付かりそうなので、一駅だけ電車に乗り漫画喫茶へと急ぐ。
つい最近まで利用していた駅に付くとまた涙が溢れてくる。
(もう、泣くのはやめよう。)
別に私が悪いことをした訳じゃないのだから。

「水谷さん?」

呼ばれた方を向くと…いつか私に"好き"と言ってくれた男性が一人、心配そうな顔をして私を見ていた。
気持ちとは正反対に笑顔で対応をする。

「山内さん。こんにちは。奇遇ですね。」

「うっうん。あの、水谷さん?大丈夫?
 顔色悪いけど、何かあった?」

「あ、いや。大丈夫です。
 急いでいて走ったので…最近、運動不足みたいです。」

「あ!ほら!」

一瞬、立ちくらみをしてしまい、身体を山内さんに預けてしまう。
また熱が上がってきたのかも知れない。
それをバレたくないけど、もう遅いかも知れない。
「水谷さん?熱すごいじゃないですか!?
 ちょっとだけ歩けますか?
 そこにベンチがあるので。
 そしたら僕はタクシー呼びますから。」

山内さんの優しさに涙が流れる。
おこがましいけど、あの日のあの時に山内さんを選んでいたらどんなに幸せだったのかなと考えてしまった。

「ありがとう…ございます…。」

今日は何でも熱のせいにできるから。