心理作戦といこうか。

打つ手がなくなり、ガクット肩を下げ頭痛やめまいと闘う。
彼はというと両手を胸の前で組み、はあとため息を一つ吐いて急所をついてくる。

「それで?
 あと、真琴が不安に思うことってなに?
 今まで住んでいたアパートと勝手が違うからか最初は不慣れだと思うけど徐々に慣れていけばいいだろ?
 もし、真琴が此処のマンションが嫌なら引っ越ししても構わない。」

「えっ!?
 そっそこまでしなくてもっ!!」

遅くなりましたが、"ちかちゃん"とは玲くんの二歳年下の弟で野中 千景(のなか ちかげ)くんの事。
彼も玲くんと同じように幼い頃からの付き合いでお兄ちゃんのような存在の一人。
現在は新聞社で記者として働いている。
社会人になってからは日本各地に最新の情報入手の為に取材に行ってしまって、なかなか会えていない。

「最近、ちかちゃんに会えてないから寂しいな。。。」

「仕事なんだから仕方ないだろ?
 それに千景だって男なんだ。
 二人だけでなんて会うなよ。」

「なんで?」

「なんででも。
 約束を破ったらどうなるか知らないぞ。」

「玲くんって昔から思うけど、凄く過保護だよね。」

呆れたようにため息を吐かれ、小さく小突かれた。
いつまで経っても彼にとっては私は妹のような存在だ。
そう思うと胸が痛んだ。
痛みを感じるということはやはり、現実らしい……。