中村君から告白を受けた次の日。

私はいつも通り瑛多と登校していた。家の最寄りのバス停がいつもよりにぎわっていた。その中心にいたのは……中村君だった。

「あ!いたいた!おはよう日葵。それと瑛多も」

日葵呼びに周りからどよめきが走る。その隣で瑛多が不機嫌そうにしていた。

「な、なんでいるの?この近くじゃないよね?」

中村君の家はたしか学校から私の家と反対側にあったはず。なのになんで…

「昨日言ったじゃん!遠慮しないって。」

他の学校の人もいるのに何て大胆発言!
おかしいおかしすぎるよ。

「俺必死なんだよ。どうしたらあいつに勝てるのか。」

あ、あいつ…?誰…?

「あ、あいつって?」

あいつなんて呼び方しても誰か分からない。

「あいつだよ。いつも日葵の護衛係。」

ご、護衛…?何それ?誰に守られてるの?

「ご、護衛って?そんな人いないよ?」

「いるじゃん。いつも日葵の周りでウロウロしてる人が。あ、気づいてない?奴も可哀想だなぁ」

こんなキャラだったんだ…。

「おい、日葵。もう行くぞ!」

中村君の態度に不機嫌だった瑛多が私の手を取ってその場から離れた。
なんか瑛多の態度がおかしい。
気のせいかな?


それからずっと中村君はやけに絡んでこようと事あるごとに私のところへ来る。その度に、瑛多がその場から連れ出してくれる。
こんな瑛多………初めて見た。

ある日、いつも通り絡んでくる中村君に瑛多が声を上げた。

「お前、マジ何なの?何しに来てんの?日葵うざがってるんだから来んなよ!」

「ちょと、瑛多言い過ぎ。ご、ごめんね。」

そう言って中村君に謝る。

「何で日葵があやまんの?悪いことなんてかんもしてねぇじゃん。こいつが勝手にしてんだから日葵はあやまんねぇでいいんだよ!」

こ、怖すぎる。今までの瑛多の中で1番怖い。

「もう分かったから!ごめん。」

どうにかこの場を収めたくて謝った。周りからの視線が怖い。何よりも。

「だから!あやまんな!」

瑛多は怒ったまんま。どうしたらいいんだろう。

「何で瑛多が怒ってんだよ!たかが幼なじみだろ?関係ねぇじゃん!」

私たちのやりとりを聞いていた中村君が口を挟んできた。

「はぁ?お前何言ってんだ?幼なじみに勝てると思ってんのか?」

たしかに私たちは誰よりも長くいる。
だからこそ勝てるはずかない。
誰もがそう思ってた。

「たかが幼なじみだろ?関係ねぇよ。俺はそんなおめぇらの関係ぶっ壊してやるんだよ!」

男同士の言い合いは怖すぎる。

「出来るものならやってみろよ!できねぇだろうけどな!」

自信満々に勝ち誇ったげにいう瑛多。
幼なじみの関係がどれだけ強いのか誰よりも知っている。

「やってやるよ!その幼なじみの関係崩壊させてやるよ!覚悟しとけよ!」

そう言って中村君はその場から立ち去った。

「なんなんだよ。あいつ。」

瑛多は相当怒ってるらしい。

「珍しいね。瑛多がそんなに怒ってるの。」

こんなに口の悪い瑛多も目付きが怖くなる瑛多も周りの人たちがビックリする行動も。

「あんなに言われて黙ってられるか。何なんだよあいつ。幼なじみの関係舐めてんのか?思い出しただけで腹立ってきた。お前はよく怒らねえでいられるな。俺の関係はそんなに薄っぺらいのか?そんなわけねぇだろ。」

どうやら瑛多は本気で怒ったら口数がいつもより2倍になるらしい。すごいぐらい愚痴ってる。

「幼なじみの関係が羨ましいのかな?」

中村君に幼なじみがいないから怒ってるのかな?

「んなわけねぇだろ。あいつお前のこと好きなんだろ、どーせ。」

……。だよね、あんなの見たらそう思っちゃうよね。仕方ないことかもしれない。

「許さねぇけどな。あいつ。俺に勝てるわけねえだろ。誰だと思ってんだよ。俺の方が好きなのにな。」

……。は、はい?今何て言いました?
お、俺の方がす、好き?どういうこと?
理解が追い付かない。

「ど、どういう意味?」

「だーかーら!俺がお前のこと好きって言ってんだよ!気づけよ!」

周りのギャラリーが一気に静まる。

「あいつのこともあるからさ。返事は今度でいいからさ。」

だ、だよね。そんな急に言われてもね。

「わ、分かった。」

「ありがと。」

瑛多はそう言って立ち去っていった。