お隣さんでしょうか




古くも新しくもない廊下をすこーしだけ急いで歩く。


そういえば。

わたしがこの団地に引っ越してきたのは、今からちょうどニ年前。
中学三年生の春休みのことだった。


家が、いま通っている高校とバスで二時間とゆうありえない距離で。

となればひとり暮らしするしかない。

そんな経緯で住むことを決めたのが、この陽だまり団地1号棟の306号室。


『う”ぁぁあ”!!こはちゃんん”ん”行かないでぇえええ”ーーー!!!』


と、泣いて止めたお父さんを説得(できてない)して、なんとか越してきたんだった。



「……お父さんとお母さん、元気かなあ」



……まあ、元気だろうけど。

なんてったって朝から7回LINEをいただいてるからね。

もう二年経つのに、いつまで経っても心配性。



なんて、思い出に思いを馳せていたら管理人室に到着していた。

雨宮さん、いるかな…?



──────コンコンッ、



扉をノック。開く気配のなさに、嫌な予感が全身に駆け巡る。


ノック2回目、3回目、…n回目……



「……あめみやさん………」



めげずにノックし続ける諦めの悪さ。

あああ……もう………



「おーい、母さんなら出かけてるけど」

「予感的中だよ、きょうくん」



隣にいた美少女に「先行ってて」と言うなりわたしを後ろから抱きしめてきたのは、雨宮さんの女たらし息子・匡平(きょうへい)くん。



「ちょっ……はなして!……おかあさん、買い物だよね?」

「たぶんな」

「わかった、ありがとう」

「お礼はちゅーでいいよ」



きょうくんは今年の中学三年生で受験生なのに、女の子も取っ替え引っ替え。

優しいのに、女癖の悪さが最難関……。



「えっ、しないよ…!」

「こはるはまじでしてくんねえよなー」

「もういってくるからね」

「はいはい。いってらっしゃーい」