隣で親族会議をしている。誰が私を引き取るかで。私は、どうでもよかった。両親が死んだことを受け入れれなくて、ただただうずくまっていた。そんな時、誰かが来た。私は、「(どうせこの人も引き取れないとか言うんだろう)」と思っていたら、怒鳴り声と破壊音。そして俺が引き取ると聞こえた。隣が静かになると、ふすまを開けて、彼が入って来た。彼は、私を見て、しゃがみ「君が真奈美ちゃん?初めまして?」と言った。なんだか懐かしい感じがしたけど、初めましてだから初対面だと思う。彼の言うことは聞こえていたけど、答える気にはなれなかった。名前を聞くと、杉波稔と答えてくれた。そしてタッパが渡され、隣の部屋の料理が夕飯だという。「アハハ、ダメ、ヤバイ。お腹痛い。会った瞬間タッパ渡す人初めて見た!」それから車に乗って学校のこととかを話してくれた。杉波さんのご両親も事故死していることを聞いて「(私と同じ傷を持っている)」と思った。そして、泣いていいと言ってくれた。私は、両親が死んだ時,泣かなかったんじゃなく泣けなかったんだ。ただただ呆然として、実感が湧かなかったから。杉波さんの言葉で堰が切れたように私は泣いた。その後、杉波さんは、何か辛くて一人で抱えきれないなら、俺にも抱えさせてくれと言ってくれた。冗談っぽく半分位は支えてやれるからって。後、私が自分を「私は可愛くないですよ。」って言ったら「真奈美は、今のままで十分可愛いよ。」と言われ、自分が真っ赤になったのが分かった。そして家に着き私が「お邪魔します。」と言ったら「違うだろ。帰ってきたら?」「ただいま?」「正解♪お帰りなさい。」と言われたとき、一筋涙が流れた。当たり前のことなのに、ただいまの後にお帰りなさいがあるのが嬉しかったから。