アスミルセカイ


トラックの横には、2年生の生徒が全員立つ。
それは借り人になるからだ。
私達の順番は後の方だったので、トラックの横に立つ。
「春樹と一緒に走るの、暁月と柏木じゃん」
(え、柏木くんなんだ)
1番危ないやつだ。
なにせ春樹はすごくイライラしているので何をするか分からない。

「ねね、雫。見て!あれ、春樹のお父さん」
後ろを振り向くと、そこには爽やかな透明肌の男の人が立っていた。
春樹くんにソックリ。
「渉さんっていうの。すごい春樹に似てない?あれで30代後半とかほんと罪だよね」

ああ平常運転だ、と安堵するもやはり心配だった。
柏木は絶対に未来を呼びに来る。
そうしたら春樹の機嫌は悪化するに決まってる。
あの春樹くんが未来と走るとは思えない。

そんな不安を抱えたまま、レースはスタートした。